人事・労務の適正人数は何人?100人に1人を鵜呑みにしない考え方

中小企業の人事労務における適正人数の絶対基準とSaaSを活用した業務最適化を解説するスライドの表紙

こんにちは、SkillStack Lab 運営者の「スタック」です。

毎月の給与計算や勤怠確認、入退社手続き、採用対応などに追われて、「うちの人事・労務は人数が足りないのでは?」と感じていませんか。

人事や労務の適正人数について調べると、「社員100人に1人」といった目安を見かけることがあります。

ただし、人事・労務の適正人数を従業員数だけで決めるのはおすすめできません。

同じ従業員100人の会社でも、採用人数が年間3人なのか30人なのか、給与計算を内製しているのか外注しているのか、勤務形態が全員同じなのかシフト勤務が混在しているのかによって、必要な工数は大きく変わるからです。

私は現在、中小企業の管理部門で人事・労務を含むバックオフィス業務に関わっていますが、人数を考えるときに重要なのは「社員何人に担当者1人か」ではなく、自社で発生している人事・労務業務に何時間必要なのかを把握することだと考えています。

この記事では、人事・労務の人数比率の考え方から、50人前後で増える法令対応、増員と業務効率化を判断する基準まで整理します。

この記事で分かること

  • 「社員100人に人事1人」をどう考えればよいか
  • 従業員規模ごとの人事・労務体制の考え方
  • 従業員50人前後で注意したい法令上の対応
  • 人を増やす前に業務改善した方がよいケース
  • 自社の適正人数を工数から計算する方法
目次

人事・労務の適正人数は「100人に1人」で決まらない

社員100人に人事1人は絶対的な基準ではない

人事部門の人数について、「従業員100人につき人事担当者1人」という数字が目安として使われることがあります。

しかし、これは法律で決められた人数ではありません。

海外のHR専門団体SHRMが公表した2025年のベンチマークでは、人事担当者の中央値は従業員100人あたり約1.98人とされています。

一方で、この数字もすべての会社へそのまま当てはめられるものではありません。企業規模、業種、人事部門が担当する業務範囲、外部委託の有無などによって必要人数は変わります。

参考:SHRMのHRベンチマーク

「100人に1人」は答えではなく、他社と比較するための参考値として使うのが適切です。

適正人数は業務量からFTEで考える

自社に必要な人数を考えるなら、従業員数より先に人事・労務業務の工数を洗い出す方が実務的です。

考え方はシンプルで、次の式を使います。

必要な人員数(FTE)=人事・労務業務の総工数 ÷ 1人が実際に業務へ使える時間

まず、現在発生している業務を分解してみましょう。

  • 勤怠確認・締め処理
  • 給与計算・給与データ確認
  • 社会保険・労働保険などの手続き
  • 入退社手続き
  • 採用活動・面接調整
  • 社員からの問い合わせ対応
  • 就業規則や社内制度の整備
  • 研修・評価・人材育成
  • 労務トラブルや個別相談への対応
給与計算や各種手続き、問い合わせなど人事労務部門へ集中する業務を整理した図

月次業務だけでなく、採用、年度更新、算定基礎、年末調整、制度改定など年間で発生する業務も月平均へ換算すると、実態に近い必要工数が見えてきます。

従業員規模別に考える人事・労務体制の目安

人数だけで適正人員を決めることはできませんが、会社の成長に伴って人事・労務の役割が変化する傾向はあります。

従業員規模体制を考えるポイント
~30人程度総務・経理などとの兼任でも運用できるケースがあります。ただし採用数やシフト勤務が多い会社では、少人数でも労務負荷が高くなります。
30~50人程度入退社、給与、勤怠、採用などが増え、兼任だけでは回りにくくなることがあります。人事・労務にまとまった稼働時間を確保できる体制を検討します。
50~100人程度法令対応や社員対応も増えるため、給与・労務と採用・教育などの役割分担を検討したい規模です。
100人以上採用、労務、給与、人事企画、教育などを専門分化しやすくなります。定型業務の効率化と同時に、制度設計や人材育成へ時間を振り向けることが重要です。

この表は法的な必要人数を示すものではなく、あくまで体制を考える際の目安です。

従業員50人前後では「事業場単位」の義務に注意する

人事・労務担当者が特に注意したいのが、常時使用する労働者が50人前後になるタイミングです。

常時50人以上の労働者を使用する事業場では、産業医や衛生管理者の選任、衛生委員会の設置など、安全衛生管理に関する対応が必要になります。

ここで重要なのは、単純な「会社全体の社員数」ではなく、原則として事業場ごとの人数で判定する制度があることです。

また、ストレスチェックについては、2026年8月時点では労働者数50人以上の事業場が実施義務の対象ですが、法改正により2028年4月1日から50人未満の事業場にも義務化されます。

最新情報:厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」

50人を超えたら人事担当者を必ず何人増やす、という法律ではありません。ただし人事・労務部門が担う管理業務が増えるため、事前に工数と担当者を見直しておく必要があります。

「人事が足りない」と感じたら原因を切り分ける

残業が続いているからといって、必ずしも増員が最初の解決策とは限りません。

人事・労務が忙しくなる原因は、大きく「人が必要な仕事が増えているケース」と「定型業務の仕組みが悪いケース」に分けられます。

増員を検討したいケース

  • 採用人数が増え、面接・候補者対応が明らかに回らない
  • 従業員面談や労務相談など、人でなければ対応できない仕事が増えている
  • 人事制度や評価制度を新しく設計する必要がある
  • 拠点や雇用形態が増え、専門的な労務管理が必要になった
  • 担当者が休むと業務が停止する状態になっている

このような業務は、単純な自動化だけでは解決できません。必要に応じて採用、配置転換、外部専門家への委託なども含めて体制を見直します。

増員前に業務改善したいケース

  • 紙のタイムカードをExcelへ転記している
  • 勤怠システムからCSVを出し、給与ソフト用に毎月手加工している
  • 社員情報を複数のExcelへ二重・三重入力している
  • 打刻漏れや申請漏れを毎月人が目視確認している
  • 同じ問い合わせへ人事担当者が何度も回答している
人事労務データが紙や表計算ソフト、複数システムへ分散している状態を示す図

こうした業務に時間を取られているのであれば、人を追加する前に業務フローを改善した方が、少ない人数でも回しやすくなる可能性があります。

特に勤怠管理をExcelで行っている場合は、勤怠管理をExcelで続ける場合の限界とクラウド移行の考え方もあわせて確認してください。

SaaSを入れれば人事・労務担当者を減らせるわけではない

ここで注意したいのが、「システムを導入すれば人事担当者を減らせる」という考え方です。

勤怠管理や給与計算、人事情報管理などのSaaSを活用すれば、転記、集計、申請回収、データ連携といった定型作業を減らせる可能性があります。

一方で、採用面接、社員との面談、労務相談、人事制度設計、組織開発など、人が判断しコミュニケーションする仕事までなくなるわけではありません。

採用・勤怠・給与などの人事労務情報をシステムで連携し、重複入力を減らすイメージ図

また、SaaSを導入しただけで計算や法令対応が自動的に保証されるわけでもありません。

就業規則や勤務体系に合わせた初期設定、データの確認、例外処理、アップデート内容の確認などは会社側にも残ります。

SaaS導入の目的は「人を減らすこと」ではなく、定型作業を減らして、人事担当者が人にしかできない業務へ時間を使える状態を作ることです。

人事・労務の適正人数を決める4つのステップ

1.現在の業務と工数を洗い出す

最初に、人事・労務担当者が1か月間に行っている仕事を書き出します。

「給与計算」のような大きな単位ではなく、「勤怠エラー確認」「社員への修正依頼」「給与ソフトへのデータ転記」のように作業単位まで分解するのがポイントです。

2.人がやる仕事と定型作業を分ける

洗い出した業務を、次のように分類します。

分類代表的な業務対応方針
人が判断すべき業務面談、採用判断、労務相談、制度設計担当者の時間を確保する
定型化できる業務勤怠集計、転記、申請回収、定型通知システム化・自動化を検討する
専門知識が必要な業務複雑な労務相談、社会保険・法務判断必要に応じて専門家への委託を検討する
不要な業務使われていない台帳、重複入力、形骸化した資料廃止する

3.改善後の必要工数を計算する

業務を整理した後で、残った仕事に必要な時間を再計算します。

この段階で初めて、「現在2人で残業しながら担当しているが、定型作業を減らしても2.5人分の仕事が残るので増員が必要」といった判断ができるようになります。

反対に、「月末の集計と転記だけで毎月数十時間を使っていた」と分かれば、人を採用する前にシステム化を検討する余地があります。

4.増員・外注・システム化を組み合わせる

最終的な解決策は、増員かSaaSかの二者択一ではありません。

  • 採用・社員対応は社内担当者を増やす
  • 定型的な手続きはシステム化する
  • 専門性の高い労務業務は社労士などへ相談する
  • 重複入力や不要な帳票は廃止する
人事労務業務を棚卸しし、システム導入と周辺業務の連携へ進む改善手順を示した図

人・システム・外部専門家を適切に組み合わせた結果として決まる人数が、その会社にとっての適正人数です。

人事・労務の適正人数に関するよくある質問

人事は社員100人に1人いれば十分ですか?

一概には言えません。

100人に1人という数字は目安として使われることがありますが、採用件数、給与計算の内製・外注、勤務形態、拠点数、人事が担当する業務範囲などによって必要人数は変わります。

従業員50人を超えたら人事担当者を増やす必要がありますか?

50人を超えたことだけを理由に、人事担当者を何人配置しなければならないという決まりはありません。

ただし、事業場単位で安全衛生関係の義務が増えるため、人事・労務部門の業務量を見直す重要なタイミングです。

SaaSを導入すれば人を採用しなくても済みますか?

必ずしもそうではありません。

SaaSは集計・転記・申請などの定型作業を減らすことには向いていますが、採用、面談、労務相談、制度設計など人が担う仕事は残ります。

人事・労務の人数が足りないと感じたら最初に何をすべきですか?

採用活動を始める前に、現在の業務と工数を一度棚卸しすることをおすすめします。

人にしかできない業務が増えているのであれば増員を検討し、転記や集計などの定型作業が負担になっているのであれば、業務フローやシステムを先に見直します。

人事・労務の適正人数は「業務量」から決めよう

人事・労務の適正人数に、すべての会社へ当てはまる正解はありません。

「社員100人に1人」といった人数比率は参考にはなりますが、それだけで人員計画を決めるのは危険です。

従業員数ではなく、人事・労務で実際に発生している仕事と工数を可視化し、人が担う仕事と仕組み化できる仕事を分けることから始めてください。

そのうえで、増員、業務廃止、外部委託、SaaS導入を組み合わせれば、自社に必要な人数が見えてきます。

人事労務の定型作業を効率化し、人材育成や組織改善など戦略的な仕事へ時間を移すイメージ

もし勤怠集計や給与計算のためのExcel作業が人事・労務の時間を圧迫しているなら、まずは勤怠管理をExcelで続ける場合の限界と移行手順を確認してみてください。

勤怠だけでなく、経理・問い合わせ管理なども含めてバックオフィス全体の仕組みを見直したい場合は、バックオフィス向け脱Excelツールの比較で用途別の選択肢を整理しています。


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