こんにちは、SkillStack Lab運営者のスタックです。
「経理DXを進めたいけれど、結局どこから手を付ければいいのか分からない」と悩んでいませんか。
クラウド会計、AI-OCR、RPA、生成AIなど選択肢は増えましたが、ツールを先に決めても経理DXはうまく進みません。
結論から言うと、中小企業の経理DXは「今の業務を全部洗い出し、効果の大きい1業務だけ小さく改善する」ところから始めるのがおすすめです。
経理DXの目的は、高価なシステムを入れることでも、Excelをすべて廃止することでもありません。
転記、確認、紙の回覧、属人化などのムダを減らし、正確な数字をより早く経営へ届けられる仕組みに変えることが重要です。
この記事では、元情シスで現在は管理部門をまとめている私の視点から、中小企業でも実行しやすい経理DXのロードマップを、ツール導入前の棚卸しから効果測定まで順番に解説します。
- STEP1:経理業務と手作業を全部洗い出す
- STEP2:効果・緊急度・難易度で優先順位を付ける
- STEP3:改善前の時間・件数・ミスを測る
- STEP4:1業務だけ小さくテストする
- STEP5:不要な作業を削って標準化する
- STEP6:会計・請求・経費などを連携する
- STEP7:導入後も数字で効果を確認する

経理DXとは?システム導入だけが目的ではない
DXという言葉から、「最新のAIやクラウドシステムへ一気に入れ替えること」を想像する方もいるかもしれません。
しかし、システムを導入しただけではDXになりません。
例えば、紙の申請書をそのままPDFへ変えただけで、印刷、押印、転記、確認といった従来の作業が残っていれば、仕事の本質はほとんど変わっていません。
経理DXで考えたいのは、「デジタル技術を使って、経理業務とその前後の仕事をどう変えるか」です。
経済産業省の「デジタルガバナンス・コード3.0」でも、DXは単なるIT導入ではなく、経営ビジョンや企業価値向上と結び付けて進める考え方が示されています。
経理DXのゴールは「ツール導入完了」ではない
「クラウド会計を導入した」「紙をPDFにした」ではなく、月次決算の日数、転記時間、差し戻し件数、紙の処理件数などが実際に減ったかまで確認して初めて、業務改善の成果を判断できます。
「2025年の崖」は現在どう考える?
経理DXの記事では、経済産業省が2018年のDXレポートで示した「2025年の崖」という言葉がよく引用されます。
ただし、現在は2026年です。
そのため、「2025年までにDXしないと危険」という締め切りとして扱うのではなく、老朽化したシステムや属人化した業務を放置すると、改革の足かせになるという教訓として捉える方が実務的です。
現在は、経産省の中堅・中小企業向けDX推進の手引きや、IPAのDX推進指標を使い、自社の現在地を確認しながら改善を続ける方法があります。
経理DXの進め方|失敗しにくい7ステップ
ここからは、中小企業でも実行しやすい順番に経理DXを進めていきます。
ポイントは、最初から「どのシステムを買うか」を考えないことです。
STEP1|現在の経理業務を全部棚卸しする
最初に行うのは、現在の業務を可視化することです。
請求書受領、経費精算、支払、仕訳、入金確認、月次決算などをできるだけ細かい作業へ分解します。

| 確認項目 | 記録する内容 |
|---|---|
| 業務 | 請求書受領、仕訳、支払、経費精算など |
| 担当者 | 主担当・副担当・承認者 |
| 入力元 | 紙、PDF、メール、CSV、販売システムなど |
| 使用ツール | Excel、会計ソフト、メールなど |
| 出力先 | 会計仕訳、振込データ、帳票など |
| 処理時間 | 1件・1回・月間の時間 |
| 頻度 | 毎日、毎週、月末、年1回など |
| 問題 | 転記、待ち時間、差し戻し、属人化など |
私なら、この段階で特に「同じ数字を2回以上入力している場所」を探します。
販売システムからCSVを出し、Excelで加工し、さらに会計ソフトへ入力しているなら、改善余地が大きいからです。
STEP2|効果・緊急度・難易度で優先順位を付ける
棚卸しすると、改善したい業務が大量に見つかります。
すべて同時に手を付けず、優先順位を付けましょう。
| 判断軸 | 見るポイント |
|---|---|
| 効果 | 時間・ミス・コストをどれだけ減らせるか |
| 緊急度 | 法対応・人員不足・担当者退職など期限があるか |
| 難易度 | 設定・データ移行・教育がどれだけ必要か |
| 影響範囲 | 停止した場合に給与・支払・決算へ影響するか |
最初のテーマとしておすすめなのは、効果が大きく、難易度が比較的低く、失敗しても旧運用へ戻せる業務です。
例えば毎月のCSV結合や定型集計なら、いきなり会計システム全体を入れ替えるより小さく検証できます。
STEP3|改善前の数字を測ってKPIを決める
DXを始める前に、現在の状態を数字で残しておきましょう。
- 月次決算が確定するまでの日数
- 請求書1件の処理時間
- 月間の手入力件数
- 差し戻し件数
- Excel・CSV間の転記回数
- 紙で処理している件数
- 月間残業時間
- ミス修正に使った時間
「DXを進める」という目標では効果を測れません。
例えば「請求書1件10分を5分へ」「月次決算を7営業日から5営業日へ」のように、改善したい数字を決めます。
最初から残業ゼロを目標にしなくてもよい
大きすぎる目標より、「毎月5時間発生している転記を1時間まで減らす」のように対象業務と数字を結び付けた方が、導入後の効果を判断しやすくなります。
STEP4|1つの業務だけ小さくテストする
ここで初めて、Excel、Power Query、クラウドサービスなどの具体的な手段を選びます。
重要なのは、最初から全社へ広げないことです。
1部署、数名、1種類の業務だけで試します。
| 現在の問題 | 最初に比較したい方法 |
|---|---|
| 複数CSVのコピペ | Power Query |
| Excel内の定型帳票 | 関数・VBA |
| 銀行・カード明細の手入力 | クラウド会計 |
| 紙の経費精算 | 経費精算システム |
| 請求書の紙・メール混在 | 請求書管理・会計サービス |
| 最新版Excelが分からない | OneDrive・SharePoint等も検討 |
| 権限・承認・履歴が必要 | 専用SaaS |
複数のCSVやExcelをまとめる程度なら、まずPower Queryの使い方を確認してみてください。
一方、仕訳・証憑・銀行明細など経理業務そのものを効率化したい場合は、経理自動化ソフトとExcel・RPAの使い分けで比較しています。
STEP5|不要な作業を削って業務を標準化する
新しいシステムへ、今の業務をそのまま移植しないでください。
例えば「担当者Aが確認→係長が紙へ押印→課長が再確認」という運用を、そのまま電子承認3段階へ置き換えても、承認待ちは残ります。
システム導入前に、次の作業を問い直します。
- この確認は本当に2回必要か
- この帳票は誰かが実際に使っているか
- このExcel管理表は別システムと重複していないか
- 紙へ印刷する必要があるか
- 毎月手入力しているマスタを連携できないか
- 例外処理を通常業務として残していないか
システムへ合わせるために業務を無理に変えるのではなく、そもそも不要な仕事を削ってから、残った業務を標準化することが重要です。
STEP6|会計・請求・経費・銀行などをつなぐ
個別業務の改善ができたら、次はデータの分断を減らします。
例えば、銀行明細をExcelへ入力し、そのExcelを見ながら会計ソフトへ仕訳を入力しているなら、金融機関から会計側へ直接データを取得できないか確認します。
クラウド会計を選ぶときも、「APIという言葉が書いてあるか」だけで決めるのではなく、自社が実際に使っている銀行、カード、販売管理、給与、経費サービスとつながるかを確認してください。
連携できない場合でも、CSV入出力で安定運用できるなら十分なケースもあります。
クラウド会計を含めて具体的な製品を比較したい場合は、次の記事へ進んでください。
\ 経理の自動化手段を比較 /
STEP7|導入後も効果を測って改善を続ける
システムを本番稼働したらDX完了、ではありません。
STEP3で記録した数字と比較します。
| 確認項目 | 導入前 | 導入後 |
|---|---|---|
| 月次決算日数 | ○営業日 | ○営業日 |
| 手入力時間 | ○時間/月 | ○時間/月 |
| 差し戻し | ○件/月 | ○件/月 |
| 紙の処理 | ○件/月 | ○件/月 |
| 残業時間 | ○時間/月 | ○時間/月 |
効果が出ていなければ、「現場が使っていない」「別のExcelへ二重入力している」「承認工程が残っている」といった原因を探します。
DXは一度のシステム入れ替えではなく、小さな改善を繰り返す取り組みとして考えた方が進めやすくなります。
中小企業の経理DXは90日で小さく始める
「具体的にいつ何をやればいいのか分からない」という場合は、まず90日程度の小さなプロジェクトへ区切ってみてください。
| 期間 | 実施すること |
|---|---|
| 1〜2週目 | 業務棚卸し・時間計測 |
| 3週目 | 優先テーマを1つ決定 |
| 4週目 | 候補ツール・改善方法を比較 |
| 2か月目 | 少人数でテスト運用 |
| 3か月目前半 | 旧運用と結果を比較 |
| 3か月目後半 | 効果測定・本番移行判断 |
最初から3年計画の巨大プロジェクトにする必要はありません。
小さな業務で「この方法なら本当に時間が減った」という成果を1つ作ると、その後の社内提案もしやすくなります。
経理DXで身近なExcelを残してよいケース
経理DXだからといって、Excelを全部廃止する必要はありません。
Excelは、分析、シミュレーション、一時的な集計、データ加工などでは今でも便利です。
例えば次のような仕事は、ExcelやPower Queryを残してもよいでしょう。
- 予算と実績の比較
- 決算数値の分析
- 会計ソフトから出したCSVの加工
- 複数CSVの定型結合
- 一時的なシミュレーション
- 社内報告用の補助資料作成
反対に、承認、権限、操作履歴、証憑、法対応、複数担当者による継続運用までExcelへ持たせようとすると、管理が複雑になりやすくなります。
Excelを残す業務とSaaSへ移す業務の境界は、バックオフィス向け脱Excelツールの記事で詳しく整理しています。
電子帳簿保存法を経理DXのきっかけにする
電子帳簿保存法への対応も、経理業務を見直すきっかけになります。
電子メールやWebサービスなどで受け渡した請求書・領収書等の電子取引データについては、電子帳簿保存法に保存義務や保存方法が定められています。
一方で、「電子帳簿保存法へ対応すれば、今ある紙をすべて捨てられる」という意味ではありません。
電子帳簿、電子書類、スキャナ保存、電子取引では考え方や要件が異なるため、対象書類と保存方法を確認してから業務フローを変更してください。
国税庁も、電子帳簿等保存制度を活用することで経理のデジタル化を進められるとして、制度別の情報や最新資料を公開しています。
法対応と業務改善は分けて確認する
「システムが電帳法対応と書いてある=自社の運用が自動的に適法になる」とは限りません。保存対象、運用方法、社内規程などを含めて確認し、判断に迷う場合は税務署や税理士等へ確認してください。
紙の申請・承認そのものを減らしたい方は、社内のペーパーレス化が進まない理由と進め方も参考にしてください。
経理DXで現場の反発を防ぐ4つのポイント
システムより難しいのが、人の運用を変えることです。
管理部門で仕組みを変えるとき、私は「正しい仕組みだから使ってください」だけでは定着しにくいと考えています。
実際に操作する人が「今より使いやすい」と感じられるかまで確認することが重要です。
1|現場の担当者をツール選定へ入れる
経営者、管理職、情シスだけで決めず、実際に入力や確認を行っている担当者にも試してもらいます。
管理側には見えていない例外処理や、「毎月ここだけ手で直している」といった実務が見つかることがあります。
2|現場にとってのメリットを伝える
「会社のDX方針だから」ではなく、具体的に何が変わるかを説明します。
- 同じ数字を何度も入力しなくてよくなる
- 紙の申請書を探さなくてよくなる
- 月末のチェック時間が減る
- 担当者が休んでも別の人が処理できる

3|通常操作だけでなく例外処理も試す
デモでは正常な操作しか試さないケースがあります。
しかし実務では、修正、取消、差し戻し、担当者不在、締め後の訂正などが必ず発生します。
無料トライアルでは、こうした「失敗したときにどう戻すか」まで確認しましょう。
4|旧運用をいつ終わらせるか決める
新しいシステムを導入したのに、念のため旧Excelにも入力を続けると二重管理になります。
検証期間が終わったら、切り替え日を決めて新規入力先を一本化します。
旧データは法定保存や監査などに必要な範囲を確認し、必要なら閲覧専用で残します。
経理DXのツール選定で確認したい10項目
機能数や知名度だけで選ばず、自社の業務で確認します。
- 現在の銀行・カード・周辺サービスと連携できるか
- 既存データをCSV等で取り込めるか
- 必要なデータを外へ出力できるか
- 担当者ごとの権限を設定できるか
- 変更履歴・操作履歴を確認できるか
- 修正・取消・差し戻しを現場で処理できるか
- 法対応に必要な機能を満たしているか
- サポート方法と対応範囲は十分か
- 初期費用を含む年間総コストはいくらか
- 解約・他社移行時にデータを取り出せるか
特に忘れやすいのが「出口」です。
導入するときだけでなく、数年後に別システムへ移る場合にデータをどう取り出せるかまで確認しておくと安心です。
会計ソフト3製品を含めて比較したい方は、経理自動化の記事へ進んでください。
\ Excel・RPA・クラウド会計を比較 /
経理DXのよくある質問
まとめ|経理DXは業務棚卸しから小さく始める

中小企業の経理DXで最初に行うべきことは、高価なシステムを購入することではありません。
- 今の業務を全部棚卸しする
- 効果・緊急度・難易度で順位を付ける
- 改善前の数字を記録する
- 1つの業務だけ小さく試す
- 不要な工程を削る
- 必要なシステム同士をつなぐ
- 導入後も数字で効果を測る
「何を導入するか」より、「どの仕事をなくしたいのか」を先に決める。
これが、ツール導入だけで終わらない経理DXの出発点です。
まずは今日、経理担当者が毎月繰り返している業務を10個だけ書き出してみてください。
その中から最も時間を使っている仕事を1つ選ぶだけでも、次に何を改善すべきかがかなり見えやすくなります。
具体的な自動化方法やクラウド会計を比較する段階まで進んだ方は、次の記事へ進んでください。
\ 次は具体的なツールを比較 /
本記事は2026年8月16日時点で公開されている経済産業省、IPA、国税庁等の情報を確認して更新しています。税務・電子帳簿保存制度等の取扱いは変更される可能性があります。実際の法令対応については国税庁の最新情報を確認し、必要に応じて税務署・税理士等の専門家へご相談ください。
