こんにちは、SkillStack Lab運営者のスタックです。
経費精算をExcelで管理していて、「申請ファイルの回収が大変」「領収書との突き合わせに時間がかかる」「承認状況が分からない」と感じていませんか。
結論から言うと、経費精算をExcelで行うこと自体が問題なのではありません。
申請件数が少なく、承認者も限定され、領収書の保存方法や会計処理が整理されている会社なら、Excelを使い続ける選択肢もあります。
一方、申請ファイルの回収、差し戻し、領収書確認、承認状況の確認、会計ソフトへの転記まで人の手でつないでいると、Excelの関数を増やしても根本的な作業量は減りません。
さらに、電子メールやWebサービスから受け取った電子領収書などは、電子帳簿保存法の電子取引データ保存も意識する必要があります。
この記事では、元情シス・現役管理部門長の視点から、Excelで経費精算を続けてもよい条件、最低限の管理方法、電子帳簿保存法との関係、システム移行を検討したい7つのサインまで実務順に解説します。
- 少人数・少件数・簡単な承認ならExcelでも管理できる
- Excelの経費台帳と領収書の保存は分けて考える
- 電子取引で受け取った領収書は原則として電子データを保存する
- 電帳法対応のためにExcel索引簿が必須というわけではない
- 転記・差し戻し・承認確認が増えたらシステム化を検討する
- VBAは定型処理には有効だが経費精算システム全体を自作しない
- 導入判断は自社の手作業時間とシステム費用を比較する
経費精算をExcelで続けてもよいケース
「経費精算=すぐSaaSへ移行」と考える必要はありません。
Excelは自由に項目を追加でき、既存のMicrosoft 365環境を利用している会社なら追加費用を抑えて始められる点が大きなメリットです。
次のような会社であれば、Excelを経費申請・管理の補助ツールとして残しても運用しやすいでしょう。
- 毎月の経費申請件数が少なく全体を把握できる
- 申請者・承認者が限定されている
- 承認ルートが1段階程度でシンプル
- 領収書の保存場所と命名ルールが統一されている
- 会計ソフトへの転記量が少ない
- 法人カードや交通系ICなどとの大量連携が不要
- 経費規程が複雑ではない
逆に、Excelを使っていることよりも、申請・承認・証憑保存・会計入力を人間が手作業でつないでいる状態の方が問題になりやすいと考えてください。
Excelで経費精算する最低限の管理項目
すぐに新しいシステムへ移行できない場合は、まず現在のExcelを整理しましょう。
経費精算表へ何でも詰め込むのではなく、「誰が・いつ・何に・いくら使い・誰が承認したのか」を後から確認できる状態を作ります。
| 管理項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請番号 | 申請を一意に識別する番号 |
| 申請者 | 経費を申請した従業員 |
| 利用日 | 経費が発生した日 |
| 取引先 | 店舗名・会社名など |
| 内容 | 交通費・消耗品・会議費などの用途 |
| 金額 | 申請金額 |
| 支払方法 | 立替・法人カードなど |
| 証憑 | 保存した領収書等へのリンク・管理番号 |
| 承認者 | 承認した責任者 |
| ステータス | 申請中・差戻し・承認済・精算済など |
| 処理日 | 承認・精算・会計処理を行った日 |
経費区分や税区分など、会計処理に必要な項目は自社の会計ルールに合わせて追加してください。
Excelファイルを各自へ配布しない
Excelを利用する場合でも、「申請書.xlsx」を各社員へ配り、メール添付で経理へ送り返してもらう運用はファイルが増えやすくなります。
Microsoft 365を利用しているなら、OneDriveやSharePointなど共有環境の利用も検討してください。
重要なのは、どのファイルが正式版なのかを一つに決めることです。
無料テンプレートを使うなら数式より運用を確認
無料の経費精算Excelテンプレートを利用すること自体も問題ありません。
ただし、ダウンロードしただけで自社の経費精算が完成するわけではありません。
- 誰が承認するのか
- 差し戻した申請をどう管理するのか
- 領収書をどこへ保存するのか
- 数式セルを誰が変更できるのか
- 会計ソフトへ誰が転記するのか
- 過去データをどこまで保存するのか
この運用ルールまで決めて初めて、テンプレートが実務で使える仕組みになります。
電子帳簿保存法でExcel索引簿は必須ではない
経費精算のExcel管理で、特に誤解されやすいのが電子帳簿保存法です。
「電子帳簿保存法に対応するには、すべての領収書をPDF化し、日付・金額・取引先をExcel索引簿へ入力しなければならない」と考えている方もいるかもしれません。
しかし、Excel索引簿は検索できる状態を作る方法の一つであって、それ自体が必須ではありません。
まず、紙で受け取った領収書と、電子メール・Webサイト・アプリなどで受け取った電子領収書を分けて考えましょう。
| 受け取り方 | 基本的な考え方 |
|---|---|
| 紙の領収書 | 紙で保存する方法がある。要件を満たしてスキャナ保存する制度の利用は任意 |
| メール添付PDF | 電子取引データとして電子データを保存 |
| Webサイトからダウンロード | ダウンロードした領収書等の電子データを保存 |
| アプリで受領 | 受領した電子領収書データを要件に沿って保存 |
国税庁の電子帳簿保存法Q&Aでも、メール添付、Webサイトからのダウンロード、クラウドサービス、スマートフォンアプリなど、受領方法に応じた電子取引データの保存方法が示されています。
国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」で最新の取り扱いを確認できます。
電子領収書をExcelへ転記するだけでは足りない
ここは実務上、特に重要です。
電子メールやWebサイトから受け取った領収書について、日付・金額・取引先だけをExcelへ入力し、元の電子データを削除する運用は避けてください。
電子取引では、受領した取引情報を含む電子データ自体を要件に沿って保存することが基本です。
Excelは「どの証憑がどこにあるか」を探すための管理台帳には使えますが、電子領収書そのものの代わりではありません。
検索方法はExcel索引簿だけではない
電子取引データについては、一定の場合を除き、日付・金額・取引先などで検索できる状態を整えることが求められます。
国税庁は検索機能を確保する方法として、表計算ソフトで索引簿を作る方法のほか、ファイル名に日付・金額・取引先を付けて一定のルールで保存する方法なども案内しています。
Excel索引簿を作ることが目的ではありません
目的は、必要な証憑を保存期間中に適切に確認できる状態を維持することです。既存の文書管理システムやクラウドサービスで要件を満たせる場合は、別途Excel索引簿を作る必要がないケースもあります。
電子帳簿保存法の要件や緩和措置は事業者の状況によって異なるため、実際の運用を決める際は国税庁の最新情報や税理士等の専門家へ確認してください。
紙の削減そのものが進まない場合は、社内のペーパーレス化が進まない理由と対策も参考にしてください。
経費精算Excelが限界を迎える7つのサイン
Excelをやめる基準は、「社員が何人になったら」「月何件になったら」と一律には決められません。
件数よりも、次の手作業がどれだけ増えているかを確認してください。
1.領収書からExcelへ毎回転記している
紙やPDFの領収書を開き、日付・取引先・金額をExcelへ手入力しているなら、その入力作業が毎月繰り返されます。
申請者が一度入力し、経理担当者が会計ソフトへもう一度入力しているなら、同じ情報を複数回入力している状態です。
2.申請ファイルの回収に時間がかかる
月末になると「まだ経費精算を出していません」「ファイルを送り直してください」と各部署へ連絡していないでしょうか。
申請内容そのものより、ファイルを集める仕事に時間を使い始めたら見直しのサインです。
3.承認状況を人に聞かないと分からない
申請者から「私の経費はいつ振り込まれますか」と聞かれ、上司・経理・申請者の間でファイルの所在を確認している状態です。
承認ルートが2段階、3段階と増えるほど、Excelファイル単体で進捗を追う負担は大きくなります。
4.差し戻しのたびにファイルが増える
「交通費の区間が違う」「領収書がない」「勘定科目を確認したい」といった差し戻しは経費精算では珍しくありません。
差し戻すたびにExcelをメール添付し、「修正版」「修正版2」「最終版」とファイルが増えていくなら、バージョン管理そのものが仕事になっています。
5.紙と電子の証憑が複数箇所へ散らばっている
紙の領収書はファイル、メール添付PDFは個人メール、ECサイトの領収書は共有フォルダというように、証憑の保管場所が分散しているケースです。
経費精算表には金額があるのに、根拠となる領収書をすぐ確認できなければ、後から確認する負担が増えます。
6.法人カードや交通系データの手入力が増えている
法人カード、交通系IC、ECサイトなど利用する支払手段が増えると、Excelへ手入力する情報量も増えます。
外部サービスから取得できるデータを人間がもう一度入力しているなら、システム連携によって削減できる可能性があります。
7.仕組みを直せる人が一人しかいない
巨大な関数やマクロを組み込み、「このセルは触らないで」「このマクロは○○さんしか直せない」という状態になったら注意が必要です。
問題はExcelやVBAそのものではなく、業務継続に必要な仕組みを特定の個人しか保守できないことです。
バックオフィス全体の属人化を整理する方法は、バックオフィスの属人化を解消する5ステップでも解説しています。
VBAやPower Queryは経費精算でも使える
Excel運用に限界を感じたからといって、VBAやマクロをすべて否定する必要はありません。
むしろ、Excel内で完結する定型作業には今でも有効です。
| Excel自動化を残しやすい作業 | 専用システムを検討したい作業 |
|---|---|
| CSVの整形 | 申請から承認までのワークフロー |
| 会計取込用データ作成 | 複数段階の承認 |
| 一覧表・集計表の作成 | 証憑と申請の一元管理 |
| 定型帳票の出力 | 法人カード等との自動連携 |
| チェック対象の抽出 | 権限・操作履歴の管理 |
避けたいのは、VBAを使って「申請画面・承認・領収書管理・会計連携・法令対応」まで全部入りの経費精算システムを一から自作することです。
開発・テスト・権限管理・バックアップ・改修・引き継ぎまで自社が負担することになります。
VBAを残すべき業務と別の仕組みへ移す判断については、VBAはやめとけ?時代遅れと言われる理由と代替手段も参考にしてください。
経費精算の手作業コストを自社データで計算
経営陣へシステム導入を提案するとき、「経理が大変だから」という説明だけでは判断材料が足りません。
外部の平均値から「年間300万円損しています」と決めつけるのではなく、現在の申請件数と作業時間から自社のコストを計算しましょう。
経費精算の手作業コスト
転記・確認・差し戻し・集計に使っている時間を概算します。
領収書確認、Excel確認、会計入力など
0 時間
0 円
※入力した作業時間と時間単価だけから算出した概算です。システム利用料、ミス対応、振込、教育、税務対応等の費用は含みません。
この金額と経費精算システムの利用料を比較すると、稟議の材料が作りやすくなります。
さらに、申請者側が入力に使う時間、承認者がファイルを探す時間、経理から差し戻す時間なども必要に応じて測定してみてください。
Excelと経費精算システムの違い
経費精算システムを導入すれば、すべての手作業やミスが自動的にゼロになるわけではありません。
経費規程、承認ルート、勘定科目、権限などの初期設定が間違っていれば、システムでも正しい運用にはなりません。
Excelと専用システムの違いは、主に「申請から会計処理までをどこまで一つの流れとして管理できるか」です。
| 比較項目 | Excel | 経費精算システム |
|---|---|---|
| 入力 | 手入力中心。自由度が高い | OCRや連携機能で入力を補助する製品がある |
| 承認 | メール・共有ファイル等で別途管理 | ワークフローを設定できる製品がある |
| 証憑 | 保存場所を自社で設計 | 申請と証憑を関連付けられる製品がある |
| 法人カード等 | CSV取込や手入力 | 明細連携に対応する製品がある |
| 会計連携 | CSV等を自社で作成 | API・CSV連携に対応する製品がある |
| 権限・履歴 | ファイル・フォルダ側で設計 | ユーザー権限・操作履歴等を備える製品がある |
| 保守 | 自社で数式・マクロを管理 | 製品アップデートを利用できる |
| 費用 | 既存環境なら追加費用を抑えやすい | 月額料金・導入費等を確認する必要がある |
システム比較では「OCRがあるか」だけを見るのではなく、自社の手作業が実際にどこまで減るかを確認してください。
経費精算を含めて経理全体の自動化方法を比較したい方は、以下の記事でExcel・Power Query・クラウド会計などの使い分けを整理しています。
\ 経理全体を見直す /
経費精算システムへ移行する5ステップ
Excelが限界だからといって、いきなり新しいサービスを契約するのはおすすめしません。
先に現在の業務を整理してから、小さく試してください。
STEP1|現在の経費精算フローを棚卸しする
申請者が領収書を受け取ってから会計処理が終わるまでを時系列で書き出します。
- 経費が発生する
- 申請書へ入力する
- 領収書を添付・提出する
- 上司が承認する
- 経理が内容を確認する
- 会計ソフトへ入力する
- 振込・給与精算等を行う
- 証憑を保存する
この中で、同じ情報を何回入力しているのか、人がファイルを移動している工程はいくつあるのかを確認します。
STEP2|必要なルールと慣習を分ける
長年続いている確認作業が、すべて必要とは限りません。
「昔から紙も提出している」「念のためExcelにも転記している」という作業があれば、本当に必要なのかを確認します。
経理DXでは、無駄な作業をそのままデジタル化するのではなく、先に業務を整理することが重要です。
進め方は、中小企業の経理DXはどこから始める?でも詳しく解説しています。
STEP3|一部署だけで試す
最初から全社員を新システムへ移行せず、経費申請が多い部署や協力を得やすい部署で試します。
実際に領収書を登録し、申請、差し戻し、再申請、承認、会計連携まで一連の流れを確認してください。
STEP4|旧Excelと新システムを比較する
テスト期間では、次の数字を比較します。
- 申請者が1件を入力する時間
- 経理が1件を確認する時間
- 差し戻し件数
- 会計入力にかかる時間
- 締め日前後の残業時間
- 問い合わせ件数
「なんとなく便利」ではなく、実測値で効果を判断します。
STEP5|切り替え日と旧データの扱いを決める
本番移行すると決めたら、「○月利用分から新システム」と明確に切り替えます。
旧Excelについても、閲覧専用で保管するのか、必要なデータを新システムへ移すのか、保存期間をどうするのかを決めてください。
Excelと新システムへ同じ申請をいつまでも二重入力し続ける状態は避けましょう。
経費精算システムを選ぶ7つのポイント

経費精算システムは、機能数が多ければよいわけではありません。
- 申請しやすさ:スマホ・PCから迷わず申請できるか
- 入力支援:領収書読み取りや明細連携で手入力を減らせるか
- 承認:自社の承認ルートを設定できるか
- 証憑保存:自社に必要な電子帳簿保存法対応を確認できるか
- 会計連携:利用中の会計ソフトとAPI・CSV等で連携できるか
- 権限・ログ:管理者・承認者・申請者の権限を適切に分けられるか
- 費用:社員数・利用者数・申請数など自社の課金条件で比較する
特に「電子帳簿保存法対応」と書かれていても、利用プランや保存する証憑の種類によって条件が異なる場合があります。
公式サイトの表記だけで判断せず、自社の保存方法を説明したうえでベンダーへ確認するのがおすすめです。
経費精算システムの稟議は自社の数字で説明する
上司へ「経理が大変なのでシステムを入れてください」と伝えても、現在の業務が一応回っていれば優先順位を上げてもらえないことがあります。
そこで、感覚ではなく現在の業務を数字に変えます。
稟議に入れたい4つの数字
- 月間の経費申請件数
- 申請・確認・転記に使っている時間
- 差し戻し・問い合わせ件数
- システム導入後に削減できそうな工程
そのうえで、現在の人件費とシステム利用料を比較します。
さらに、属人化、担当者不在時の対応、証憑検索、承認状況の把握といった金額にしにくい課題も補足してください。
「SaaSを入れれば必ず得をする」ではなく、「現状維持と導入後を同じ条件で比較する」方が、経営側も判断しやすくなります。
経費精算とExcelに関するよくある質問
まとめ|経費精算Excelは手作業の量で限界を判断する
経費精算にExcelを使っているからといって、すぐにやめる必要はありません。
少人数・少件数で承認ルートがシンプルなら、Excelでも十分管理できるケースがあります。
一方、次の状態になっているなら見直しのタイミングです。
- 領収書からExcelへ毎回転記している
- 申請ファイルの回収・差し戻しに時間がかかる
- 承認状況を人へ確認している
- 紙と電子の証憑が複数箇所へ散らばっている
- 法人カード等のデータを手入力している
- 会計ソフトへ同じ内容を再入力している
- Excelの仕組みを一人しか保守できない
そして電子帳簿保存法への対応では、Excel索引簿を作ることではなく、受領した証憑を適切な方法で保存し、必要なときに確認できる状態を作ることが重要です。
Excelを残す部分、自動化する部分、専用システムへ移す部分を分けて考えれば、無理に「全部脱Excel」にする必要もありません。

まずは1カ月だけ、経費申請・確認・転記・差し戻しに何時間使っているか測ってみてください。
経理全体をExcel・Power Query・クラウドサービスのどこまで自動化するかは、以下の記事で比較できます。
\ 経理全体を見直す /
本記事は2026年8月16日時点の公開情報を確認して更新しています。電子帳簿保存法・税務上の保存要件は、取引方法や事業者の状況等によって取り扱いが異なる場合があります。実際の保存方法を決定する際は国税庁の最新情報を確認し、必要に応じて税理士等の専門家へ相談してください。
